屋根材の種類とメンテナンス方法
屋根は普段はあまり目立たない存在です。
しかし、お家の耐久性にとって非常に重要な部分です。
ここでは、屋根材の種類と見分け方、特徴やメンテナンス方法をお話します。
屋根材の種類
近年の住宅で多く使われている屋根材は、金属屋根60%、セメント系15%、粘土瓦15%、アスファルトシングル5%などとなっています。
耐久性、耐震性、太陽光パネルの取り付けやすさなどから、金属屋根がシェアを伸ばしています。
屋根材(屋根の仕上げ材)には、粘土瓦、スレート瓦、セメント瓦、金属板、アスファルトシングルなどがあります。
そして、瓦にもいくつか種類があります。
これらの種類は外観から見分けることができます。
粘土瓦は、粘土で形をつくり、焼いて仕上げます。
釉薬をかけて焼く釉薬瓦、釉薬をかけないで焼くいぶし瓦、無釉瓦があります。
また、形状は和瓦と洋瓦に区分されています。
瓦1枚は2~4㎏と重いため、風で飛ばされにくく耐久性にも優れていますが、重いので耐震性では不利になります。
施工に葺き土をしている場合は、屋根全体の重量はさらに重くなります。
しかし、1995年の阪神淡路大震災以降、土葺きは急速に減りました。
昨今では、JISにより規格化されているため、割れてもその部分を別の瓦に取り替えることができます。
施工後の屋根は、瓦の下に隙間があるため、暑い時期には熱気が抜けて屋根の下の温度を下げる効果があります。
それぞれの瓦の違いは、形状および表面の色とツヤで判断します。
①釉薬瓦
粘土を瓦の形状にして、その上に釉薬をかけ、高温で焼き上げた瓦です。
陶器瓦とも呼ばれます。
釉薬瓦は、瓦の表面にガラス質の釉薬層が形成されているため、水が浸透せず、長い年月を経ても美しい状態を保ちます。
また、釉薬瓦自体は、割れたり欠けたりしない限りは、半永久的に使用することができます。
メンテナンス方法としては、傷んだ瓦を交換していくことになります。
釉薬をかけて焼き上げているため、水も浸透せず、寿命が長いため、定期的な塗り替えは必要ありません。
ただし、地震や台風などによる瓦のずれや浮き、割れ等の不具合が起こっている場合は、雨漏りにつながるため、早めの処置が必要です。
②いぶし瓦
いぶし瓦は、素地の状態で瓦を焼成し、そのあとで蒸し焼きにしたものです。
蒸し焼きにすることで、瓦の表面に炭素膜が形成され、全体が渋い銀色をした瓦になります。
年月の経過とともに、表面の炭素膜が剥がれ落ちて変色してしまいます。
さらに、炭素膜が剝がれ落ちると水が浸透しやすくなります。
③瓦屋根の部材(熨斗と漆喰)
熨斗(のし)と漆喰(しっくい)は、粘土瓦、セメント瓦(和瓦と洋瓦)による瓦屋根の棟に使用されています。
棟は小屋組みのあるすべての屋根の一番頂部です。
熨斗は、瓦屋根の中でも特に目立つ箇所なので、その高さや装飾など、デザイン的にも重要なポイントとなります。
瓦の屋根のメンテナンス方法
瓦一枚一枚が独立しているため、部分交換や補修が可能です。
何らかの原因で傷んだ瓦があれば、瓦を差し替えます。
瓦に飛来物が当たって割れたり、台風などの強風でずれたりした場合は、早めの補修が必要となります。
まだ、雨漏りが発生していなくても、防水紙の劣化につながってしまいます。
また、漆喰の剥がれによって内部の土が露出し、雨水で流されることもあります。
そうなる前に、漆喰の塗り替えを行う必要があります。
瓦屋根は重量があるため、他の屋根材に比べて耐震性が劣ります。
また、瓦屋根の重さのせいで、屋根の下地がたわんでしまうことがあります。
屋根の下地のたわみは、屋根材の間に隙間を発生させ、瓦のずれなどにもつながり、雨漏りあるいは下地等の腐食の危険性を高めるので、早めの補修が必要です。
葺き替えまたは葺き直しの際に、下地を補強するか新設することをおすすめします。
また、古い時期に施工された瓦屋根は土葺きになっています。
瓦の重さ+土の重さも加わっているので、耐震性を考えて、土葺きではなく桟葺きにすることで重さを軽くすることができます。
近年では重い瓦屋根ではなく、軽量の屋根材に葺き替えるお客様がほとんどです。
瓦屋根は不具合があった時にメンテナンスがしやすいですが、やはりどの屋根材よりも重量があるので、耐震面での不安がある方は軽量の屋根材に葺き替えもご検討ください。
スレートは石質薄板の総称で、天然物と人工物があります。
ただ、天然物の石材は高価なため、住宅では人工物が使用されます。
この人工物がスレート瓦で、化粧スレート、着色スレートなどとも呼ばれます。
コロニアルやカラーベストと呼ばれることもありますが、これはケイミュー(株)の商品名です。
スレート瓦は、セメントと繊維を主材料として成形した板に塗装をしたものです。
軽く、安価で、施工しやすいのが特徴です。
そして、軽量なので地震に対しても有利です。
表面の塗装で耐候性を保っているため、劣化の進行により定期的に塗り替えを行う必要があります。
かつては、原料に石綿(アスベスト)が使用されていましたが、アスベストの使用が禁止された2004年以降は無石綿になっています。
防水のため3寸勾配(約16.7°)以上が必要です。
勾配が基準より小さいと、大雨などの時にスレート瓦の裏面に水が回って、雨漏りにつながります。
粘土瓦に比べて重量が軽く、施工が非常に簡単なことから、これまで多く使われてきました。
欠点としたら、屋根下地部分の通気性が悪く、木材の腐食や劣化が進みやすいことがあります。
スレート瓦のメンテナンス時期
スレート瓦は塗料により、美観性と耐久性を維持しているため、定期的な塗り替えが必要です。
「くすんで見える」「薄汚れている」と感じた場合は塗り替え時期です。
塗膜が劣化して防水性が低下すると、水はけが悪くなり、汚れも付着しやすくなります。
また、汚れが付着した部分はさらに水はけがさらに悪化し、汚れ付着もいっそう増加します。
このようにして、全体的に劣化が進行します。
スレート瓦のメンテナンス方法
塗り替えの際は、まず高圧洗浄で屋根の表面に付着しているゴミや汚れを取り除きます。
高圧洗浄後は乾燥させ、乾燥したら屋根のひび割れなどの補修や金属部分のケレンを行います。
割れが発生している場合は、その上から塗装をしてもまたすぐに割れてきてしまうので、シーリングやパテで補修をします。
また、割れが大きい場合や複数発生している場合には、その部分のスレート瓦を交換します。
これらの下地調整が終わってから塗装に進みます。
まずは下塗り材を屋根に塗布します。
下塗りのあとは、中塗り・上塗りと、塗装します。
中塗り・上塗りの塗料には「紫外線に強い」「遮熱効果がある」など、様々な種類があります。
目的に合わせてお選びいただきます。
全体的に大きく劣化してしまっている場合は、塗装ができないことがあります。
その場合は葺き替え工事、または、既存のスレート瓦の上に新しい屋根材を重ねる「カバー工法」でのご提案となります。
石綿(アスベスト)を含んでいる古いスレート瓦は、撤去作業と廃棄物処理に厳重な注意が必要となります。
セメント瓦は、モルタルを型で成形して塗装した瓦です。
コンクリート瓦ともいわれています。
粘土瓦と比べて寸法の均一性に優れているため、施工性に優れています。
瓦の表面の塗装で耐候性を保っているため、定期的に塗り替えを行う必要があります。
定期的に塗装をしないと、セメント瓦自体の劣化が進行し、ひび割れにつながります。
勾配は4寸勾配以上が必要です。
粘土瓦に比べて軽い屋根材になっています。
セメント瓦は、塗料で着色するため、カラーバリエーションが豊富です。
和風・洋風ともに様々な形状があります。
セメント瓦のメンテナンス方法
雨や湿気などにより、カビやコケ、藻が発生することもあります。
これらについては、高圧洗浄で洗い流します。
15年を目安に塗り替え工事を行うのが理想です。
地震や台風などにより、瓦のずれや浮き、割れなどが発生すると、雨漏りにつながるため早めの補修が必要です。
セメント瓦自体が独立しているため、1枚単位での差し替えが可能です。
ただ、広範囲での劣化や塗装の時期を大幅に過ぎてしまっている場合は、全面の葺き替えをおすすめします。
葺き替え工事の場合は、まず既存のセメント瓦を撤去します。
屋根材を撤去したら、野地板(屋根の下地材)がでてきます。
多くの場合、下地が傷んでることがほとんどなので、下地も新しくします。
その上に、ルーフィング(防水紙)を張り付けて、新しい屋根材を施工します。
モニエル瓦は、普通のセメント瓦とは少し異なります。
水分の少ないセメントを押出成形した上で、着色スリラーと呼ばれるコンクリートと同質の無機質着色材を、1mm以上の塗膜として形成させ、その後にアクリル樹脂を塗った瓦です。
塗膜の下に、着色したセメント層(着色スリラー)があり、その下がセメント瓦になっております。
押出成形で製造されているため、寸法精度が非常に高いのが特徴です。
施工性と防水性を備えており、デザインにも多様性があります。
勾配は4寸勾配以上が必要です。
モニエル瓦のメンテナンス方法
モニエル瓦は、残念ながら現在は製造されていません。
そのため、割れなどにより交換する場合は在庫を探します。
交換用の瓦が手に入らない場合は、応急的に破損した瓦をシーリング材等で補修するか、屋根全体の葺き替えを行います。
再塗装を行う場合は、塗料の密着不良を防ぐために、下地処理として高圧洗浄でスリラー層を除去して、モニエル瓦に適した下塗り塗料を選定して塗装します。
しかし、製造会社が現在では撤退してしまっているため、石綿建材の事前調査における石綿使用有無に関し、証明での確認を行うことができません。
したがって、成分分析調査を行わない限り、石綿含有が不明な建材として扱うことになり、高圧洗浄時に石綿飛散防止対策として隔離養生や洗浄水の回収をしなければなりません。
そうすると、養生費用が高くなるため、再塗装は実質的には難しくなります。
したがって、モニエル瓦のメンテナンスは、「石綿の飛散リスクが小さい他の屋根材による葺き替え」が現実的です。
塗装して使用しているので、定期的に塗り替えを行う必要があります。金属屋根は、軽量で、雨仕舞(建物に雨水が入らないようにする仕組み)や耐候性の点で優れています。
古くから使われてきた金属素材としては銅板がありますが、高価なのであまり広くは使われていません。
現在、住宅で多く使われているのが、ガルバリウム鋼板、亜鉛メッキ鋼板です。
ガルバリウム鋼板は亜鉛とアルミの合金を鉄板にメッキしたものです。
鉄板に比べて耐久力が高く、比較的安価です。
亜鉛メッキ鋼板は、亜鉛メッキで加工した鉄板です。
亜鉛の表面には酸化被膜が形成されているため、水に強く、傷がついた場合でも、亜鉛は鉄よりも腐食しやすく、亜鉛が優先して腐食することで鉄の腐食を防ぐ効果があります。
ただ、塗装して使用しているので、定期的な塗り替えが必要となります。
金属板の葺き方としては、瓦棒葺き、一文字葺きなどがあり、瓦棒葺きには、心木ありと心木なしがあります。
一文字葺きは、横の継手がつながるように、軒先から棟に向かって葺く工法です。
継ぎ目がないので雨漏りの恐れが少なく、3寸以下のゆるやかな勾配でも使用することができます。
金属屋根は瓦とは違い、一枚一枚を屋根に積んでいるわけではないので、地震時に落下する危険性が少なく、強風で飛ばされることもあまりありません。
金属屋根は断熱性・遮音性が劣るため、屋根下地または小屋裏に断熱材や遮音材を入れて施工します。
昔は、雨音が大きくて気になるなど指摘されていましたが、近年では、屋根材自体や施工法の改良により、断熱性や遮音性も含めて改善されています。
金属屋根は、軽量性・防水性・不燃性・加工性に優れているのが特徴ですが、表面塗装のメンテナンスが必要な商品もあります。
防サビ・防蝕の注意も必要です。
アスファルトシングルは、ガラス繊維のマットにアスファルトを浸透させ、その上に石粒を張り付けた屋根材です。
シングル屋根とも呼ばれます。
シート状で扱いやすく、曲面など複雑な屋根形状でもでも施工することができます。
石粒の色によって様々なカラーバリエーションがあります。
一般的な屋根瓦は45~60㎏/㎡、スレート瓦は18~21㎏/㎡ですが、アスファルトシングルは9~12㎏/㎡と軽量です。
また、素材がアスファルトなので、ひび割れやサビが発生しません。
表面が石粒で覆われているので傷がつきにくく、防水性・耐候性・耐久性・耐震性に優れているので、アメリカでは屋根材の代名詞になっています。
安価であり、施工も釘と接着剤で下地の上に貼っていくだけなので簡単です。
3寸勾配以下の勾配でも使用可能です。
しかし、アスファルトシングルは6mm程度の薄いシートであるため、強風により剥がれや破れが起こることがあります。
表面の石粒が落ちてくることもあり、放っておくと劣化を早めるため、5~10年ごとの点検をおすすめします。
また、アスファルトシングルは屋根カバー工法に使用できる屋根材でもあります。
カバー工法では、既存の屋根材を撤去しなくてよいので、工事費用の削減や工事期間の短縮にもつながります。
屋根が2重になるので、断熱効果や防音効果も高くなるメリットもあります。
ただし、屋根の重量は増えます。
アスファルトシングルのメンテナンス方法
表面の石粒の剥がれやアスファルトシングル自体に浮きや剥がれ、破れなどが生じている場合は、部分的に張り替えで補修を行います。
塗装によるメンテナンスをする場合は、まず高圧洗浄で汚れ、カビやコケなどを落とします。
その上で、下地の状態を整えて、アスファルトシングルに適している塗料を塗ります。
下塗り材を塗装して、中塗り、上塗りと計3回塗装します。
このように、様々な屋根の種類がありますが、メンテナンス時期やメンテナンス方法は異なります。
お住まいの屋根についてお困りごとがあれば、ぜひ一度ご相談ください。
お読みいただきありがとうございました😊